回文エッセー
                   ようこ を こうよ
            ヨウコを恋う夜


               ながみなとのようこよこはまよこすかへかすこよまばこよこうよのとなみかな
          名が港のヨウコ横浜横須賀へ嫁す娘読まば来よ恋う夜の礪波かな


                  須江太郎は一年ぶりの帰港にご機嫌だった

             ひとめこのきをさくきてきしおのかのおしきてきくさおきのごめとび
                一目この気を裂く汽笛潮の香の圧し来て聞くさ沖の鴎飛び

              
酒場のあのはまだいるかな名は聞きそびれたが忘れられないあの泣きほくろ

                      かたきけついとこたえたこといつげきたか
                     堅き決意と応えた言意告げ来たか


                     【BAR・港のヨーコ】のドアを押すと微笑む彼女がそこにいた

                      さいごためしはできずもこいよいこもすきではじめたこいさ
                
 最後試しは出来ずも来い 良い娘も好きで始めた恋さ

                    一瞬目を合わせ須江は狼狽えた。名前を聞くさえしどろもどろの須江

                   
さりのなふういとうろたえずばなのれおれのなはすえたろうというふなのりさ
                  
然りの名風いと狼狽えずば名乗れ俺の名は須江太郎と言う船乗りさ

                     恥じらうようにヨウコが応える

         しりあうこいよわたしのなはようこすてきなくんしにしんくなきですこうよはなのしたはよいこうありし
                 
知り合う恋よ私の名はヨウコ素敵な君子に辛苦無きです恋う夜花の下良い幸ありし

           
屈託のない笑顔が巡り会えた幸せを物語っているかのようだ。二人はその夜カンバンまで語り合った

              よいこすはあいたいなとないたいあわすこいよ
            
酔い越すは逢いたいなと泣いた居合わす恋よ

            
飲み明かすつもりが酔いつぶれ情を交わすこともなく朝。

               かためざめさあのことこのあさめざめたか
            
片目覚めさあの娘と此の朝目覚めたか


                    昨夜の酒は私のオゴリにしておくワ」とヨーコ。須江は無料(ただ)とは随分安い酒だなと苦笑

               やすざけたるさくやはかなくひめたこいよいこだけめひくなかはやくさるだけさすや
            安酒たる昨夜儚く秘めた恋好い娘だけ目引く仲は厄去るだけ指すや

              海の男は渡り鳥 明日は別れのドラが鳴る 別れ惜しむか最後のデート

               さいごのでーとでとーでのこいさ
               最後のデートで遠出の恋さ

              浜辺で網を引く漁師に手伝い網を曳くのも楽しきひととき

 

               ながれははれはっぴーもかんじしじしんかもーひつぱればはれかな
            
流れは晴ハッピーも感じし自信か網引っ張れば晴かな

      
    須江が甘酒を買ってくるからと一寸離れた隙にチンピラがヨーコに絡んできた

               「キャー!」
           ヨーコの悲鳴に須江が飛んで戻りチンピラに一撃を食らわす。チンピラがナイフで逆襲する


                    やくざりきみがわれをふいなつきできづないふおれわがみきりさくや
            
ヤクザ力みが吾を不意な突き出来づナイフ折れ我が身斬り割くや


             男の意地見せた須江の勝利


           ようこすらまもれずばすえはおとこじゃないささいなやじことをばえずはず
れもまもらすごうよ
          ヨウコすら護れずば須江は男じゃない些細な野次事をば得ず葉擦れも護らす豪よ

              ヤクザ退散
                  かるさがはじけなきゆめさめゆきなげしばかさるか
                  
 軽さが弾け泣き夢醒め雪投げし馬鹿去るか

                 束の間のデートも明日は出船の別れと思えば矢張り憂鬱

                        かなしきときひるもつもるひきときしなか
              
悲しき時昼も積もる悲喜と来し汝か

             
別れを惜しむ二人に無情の銅羅が鳴る

             
よるなねがいよしれかわるさはとばさるわかれしよいかねなるよ
             
寄るな願いよ知れ変わる左波止場去る別れし宵鐘鳴るよ


            「
いつか又逢えるさ」涙を拭いて手を振れば山河は晴れゆく

               
わかるるはかなさのこるみはかなしなかばみるこのさなかはるるかわ
               
別るる儚さ残る身は悲し半ば見るこの最中晴るる川     【完】

                 
                   ましろしきんかざんおきしおしきおんさかんきおしかたしろしま
                          真白路 高潮金華山沖潮路 気温差寒気牡鹿田代島